プロジェクトストーリー
武田薬品工業 湘南研究所プロジェクト 中編
[2007年~2008年]プロジェクトをドライブさせる仕組みづくり
最初の4ヶ月は大きなプロジェクトを円滑に進めるための 土台づくりを徹底。特に重要なのが”会議体の構築”でした。(川原)
ここからは2007年3月の発足以降の、具体的なプロジェクトの進め方について伺っていきます。どのような体制や組織で進行されたのでしょうか。
- 野村
- 弊社の中では「建設チーム」「移転チーム」「行政住民対応チーム」という3チームが軸になって進めました。このうち橋口がリーダーを務めた「建設チーム」は湘南研究所の施設建設そのものを担うチームです。建設チームには、研究部門、エンジニアリング部門、資材部門という3つの部門からチームメンバーが選定され、それぞれの部門でとりまとめたことを、上位の会議で決める、という形で進めていきました。

- 川原
- 最初に当グループが行ったのは、プロジェクト全体をフレームワークした上で、与件を整理し意思決定のプロセスを明確にすることです。そのために重視したのが「会議体の構築」でした。これは武田薬品工業の社内における意思決定の組織を、ヒエラルキー状につくることです。同時に、会議体で発生する決定事項も階層構成にして明確にしておきます。基本設計に入る前の最初の4ヶ月で、われわれはプロジェクトを円滑に進めるための土台づくりを徹底しました。
- 橋口
- 会議体の末端にあたる「各種分科会」というのは、弊社が普段から、研究所を設立する際に立ち上げているものです。各種分科会での決定事項をうまく吸い上げて、きちんと設計事務所や建設会社に伝えることができる組織の構築を山下グループにおまかせした、という形でした。
- 川原
- 大きなプロジェクトではスタートが大事です。そこをぬかりなく整備し後々までの意思決定と意志疎通のしくみを構築することがわれわれの役割ですね。
会議体のヒエラルキーを示した図。意思決定のトップにあたるのが「生産方式選定会議」で、「建設チーム」「移転チーム」「行政住民対応チーム」それぞれのリーダーなど、プロジェクトの主要メンバーだけが集う。その下にプロジェクト会議、設計会議、各種分科会が入るという全体構成だ。基本設計段階では、全体の参加者が30~40名。フェイズが進むごとに会議体はふくらみ、参加者が増えていく。山下グループの担当メンバーは重要会議のほとんどに参加する。
何かあればひと声かけるだけでパッと関係者が集まって 対応がなされるので、弊社の担当者もやりやすかったようです。(橋口)
- 野村
- 基本設計が本格的にはじまったのが2007年7月です。そのころ、実施設計をどこで進めていくのか、という話が持ち上がりましたね。
- 川原
- 当グループから設計室を大阪の武田薬品様の敷地内に置くことを提案したのですが、それには意思決定に関わる人が集まりやすい場所を用意し、合意形成をスムーズに進めたい、という意図がありました。
- 野村
- L工場という使われていない、かなり古ぼけた建物を設計事務所と建設会社の計8社で、利用していただいて。工区を分けてJVを組織する一般的な形式ではなく、建設会社7社がコストオン方式で巨大な施設全体を担当する方式なので、意思疎通が非常に大事になってきます。そのため各社の担当者に大阪に詰めていただく方が進めやすいはずなのですが、当初は各社のサイトでやりたいという意見も多かったですね。
- 川原
- 1階が会議のためのスペース、2階が実施設計の作業をするための事務所という構成でした。意思決定を円滑にするために、2階はわれわれの意図で間仕切りのない大空間としたのです。しかし当初はこんな仕切りのない場所で設計するなんてとんでもないと、かなり責められました。実際に使っていただくと、コミュニケーションしやすいと評判は上々でしたが。

- 橋口
- 弊社の研究者から何か問い合わせがあった場合などにも、ひと声かけるだけでパッと関係者が集まってくれて対応がなされるので、弊社の担当者もやりやすかったようです。
武田薬品工業大阪工場・研究所の敷地内の空き工場を利用した仮事務所の様子。2階が間仕切りのない設計室で、1階が会議室だった。2008年5月28日ら約12ヶ月間、関係各社が詰めて実施設計を進めた。(提供:竹中工務店)
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